Jun 04, 2008

個人的には

 最近仏教ブームです。

『大乗起信論』(岩波文庫)
『般若心経・金剛般若経』(岩波文庫)

現代語訳を読みながら註や漢文を見ています。こういう書物は普通とちがい読み終わりがない。
言葉は難しい。けれど、「如」て「ありのまま」ってことなのかな。
 でも、仏やその教えは「在る」とも「ない」とも言い得ないそうだから。
 でも、本当のことってそうじゃないかな。わかったといえば、うそになるし。だから、あえて言わないし誰も真理を所有することはできない。時々、非常に大事なことが訪れて(これを如来というのか)つっても、いずこから来たかはわからないのだが。常住ともいっているし。新しく見つけたと思えばそこにあったとも。
で、その真理の証言者に常になれるわけではない。そんな権限は誰にもない。しかし、誰でもが本当のことに気づくことができる。
この2つの本は対話というか詩というか。わかるまで話して話しては忘れてしまうという形で本当のことはあるんだな。だって、本当のことが誰かに握り締められたままだったら極端な話、他の人がいる意味がなくなってしまう。

面白いのは、もちろんお経なのだけれど、語りかけ対話する相手をちゃんと考えていることだ。伝道という一方通行よりも、伝え合うことの難しさを作者(複数だろう)が感じている。得る・修める。伝える側も学んでいる過程であり、教え自体に教えるものの独善を戒める働きがあるようなのだ。しかし、なぜその働きが失われたかも興味あるところだ。また教えの力が失われるかもしれない遠い未来への配慮も感じられる。恐ろしい広さの射程である。今このとき、あなたに、あなた方に伝えることが務めであるということ。また、教えの自己存続よりも、「あること=ないこと」という形で、その自己存続の絶対化の悪を浄化しようとしている。あるとも、ないとも言葉で言いうるが、そこに実体化や虚無化の罠が潜んでいるとしつこく語られる。我々はよいことを忘れてしまうし、また忘れまいとしてしがみつく。人や生き物の働きはそうなのだが、どちらも一概に良いとも悪いとも言えず、逆にいえば執着はあるとき牙をむくことを説く。金剛経のほうは、忘れ去られても何がしかそのありのままの心が生きていることをこそ肯定している。
 なぜ偉そうに教えを独占できないか。そうしたら、みんなが気がついて向上することがなくなるから。しかし、なぜ教える人がいるのか。その人は常に何かの通路になって語っているし、代役みたいになって、真理らしきものをいう。それは心に響いたり響かなかったりする。子ども達が何も言うことを聞かないときに、先生は怒る。子どもは「なぜ」と問う。しかし先生は究極的には「なぜ勉強するか」「なぜ今坐るのか」を答えることはできない。その感じは問答無用に見えるが、先生さえも何かの代行であって、真理の所有者ではないからだ。しかし、教えるということは依然として大事だとすれば…これは喩えであり、今の教育や世の中の前提自体がおかしいということは僕も重々感じるがそれはまた別の機会に。最近先生をやっているものの愚痴を聞くことが多く、ついつい先生の喩えになってしまったけど、そこでいくつかのことを考えたのだった。てか俺先生ちゃうし学校しんどかったし。。

 私はハイデガーのヒューマニズム書簡を同時に少しずつ読んでいるが、ハイデガーも「存在に呼びかけられ、それに従う」という気持ちを強調するから、遠くはない。しかし、「存在=ある」という。仏教は「在る」ことが在りすぎることへの解毒剤のように思える。在るというより、在ってほしいという人の気持ちが落胆や絶望を生み出す。そのメカニズムに敏感だ。ハイデガーは民主主義・ヨーロッパ理性が世界化した中では、「存在」つまりありのまま(自然・人らしさ?)は病んでいくから、まずはそれに近づく処方箋を書く。なぜなら、あれもないこれもないという虚無主義が理性の果てに在るからだ。それもまた様々なことを絶望の淵で夢見、ありもしない希望や対象を作り出す。仏教が求めることで対象を実体化する戒めにハイデガーも通ずる。けれど、在るが回復しても、逆にその在るの力も無垢でなくやっかいなように思える。まだ終わりではないので、仏教の古い経はそこからまだ必要にも思える。欲望や実体化の果てしなさの中で、危機を感じている点はハイデガー・仏教とも意外と近い。しかし、まだ全然不勉強なのと、テーマがでかいので、判定はできないが。



 しかしふと思う欲望の果ては何か。欲望とは何か。欲望が悪だとしても。そんな素朴な問いも浮かぶ。
Posted at 08:06 in nikki | WriteBacks (0) | Edit
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