Sep 17, 2009
ベルギー幻想美術館
15日午後より、澁谷のBunkamura・ザ・ミュージアムにて観てまいりました。副題は「クノップフからデルヴォー、マグリットまで」となっています。大雑把に括れば19世紀末のベルギーの「象徴主義」の画家たちと言えるのでしょうが、それぞれの目指した絵画は、さまざまな主張と試みがみられます。フェルナン・クノップフ(1858~1921)
ポール・デルヴォー(1897~1994)
ルネ・マグリット(1898~1967)
フェリシアン・ロップス(1833~1898)
ジェームズ・アンソール(1860~1949)
ジャン・デルヴィル(1867~1953)
エミール・ファブリ(1865~1966)
レオン・フレデリック(1856~1940)
これらの画家の113点の作品は「姫路市立美術館」所蔵のものです。1983年(昭和58年)に開館したこの美術館は、開館以来、ベルギー美術品の収集に力を入れたのは、姫路市とベルギーの工業都市シャルルロワ市と姉妹都市関係にあったからです。ベルギーの近代美術史を語れるほどの作品が収集されているとのことです。
1830年に建国したベルギーの文化はフランスの影響を大きく受けていました。フェリシアン・ロップスは、パリで活躍した画家で、風刺画や本の挿絵を多く描くようになり文学者との交流を深めていきました。詩人シャルル・ボードレール(1821~1867)の「悪の華」の挿絵も担当しています。こうした文学者たちとの交流が多く見られるというのが、19世紀ベルギーの画家の1つの特徴と言えるかもしれません。
(多分、この絵ではないか?と思います。展覧会にはありません。念の為。)
*訂正。この表紙絵は「エドワルド・ムンク」の「マドンナ・1895年」です。失礼しました。
またジェームズ・アンソールの「キリストの生涯・32点組」のリトグラフ。あるいはポール・デルヴォーの「クロード・スパークの小説「鏡の国」のための連作・最後の美しい日々・8点組」のエッチングや「ヴァナデ女神への廃墟の神殿の建設・11点組」のエッチングなどもありました。
この絵画の時代的背景をみますと、19世紀後半から20世紀前半にかけてのベルギーは、本国の何十倍もある植民地(コンゴ)からの富が産業革命を加速させ、飛躍的な繁栄をもたらした時代です。その恩恵は芸術の世界にも及び、リベラルな若い実業家たちは新しい芸術を支えました。こうして芸術は宮廷文化から、裕福な階級の人間たちの文化に変わってゆきました。宮廷に庇護されることから、値踏みされる芸術の時代の到来と言ってもいいかもしれません。しかしながら皮肉にもその芸術の中身は、発展する近代社会における人間の疎外を表わすものともなったのです。
展覧会全体のなかで気付いたことですが、女性を描いた絵画の圧倒的な多さでした。それは美しい女性像であったり、あるいは世紀末の魔性の女性であったりと。。。これがベルギー幻想美術の1つの特徴です。
(ジャン・デルヴィル夫人・ジャン・デルヴィル)
(ヴェネツィアの思い出・フェルナン・クノップフ)
さらに産業革命は、19世紀後半のベルギーでは労働争議などが頻発していました。画家たちも労働者の現実に目を向け、それを題材にした作品も描きました。
(チョーク売り・レオン・フレデリック)
絵画のみならず、あらゆる芸術は、その時代背景(戦争、経済など。)を如実に表わすものであることをわすれてはならないでしょう。
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