Sep 10, 2008
画家と庭師とカンパーニュ
監督:ジャン・ベッケル
原作:アンリ・クエコ
脚本:ジャン・ベッケル 、ジャン・コスモ 、ジャック・モネ
老年はわれわれの顔よりも心に多くの皺を刻む。 モンテーニュ
ある先輩詩人がブログで紹介なさっていた映画ですが、ずっと気になっているのに、なかなか腰が上がらない。もう上映期間の終わりも迫ってきましたので、「エイヤ!」と腰をあげて渋谷まで観に行ってきました。淡々としたストーリーでしたが、期待は裏切られませんでした。
老境に入った孤高の画家「キャンバス」が、亡くなった父母の郷里の家に、都会に家族を置いたまま帰郷しますが、家は荒れ果てていました。まず庭の手入れのために庭師を呼びますが、その庭師「ジャルダン」は、もと国鉄職員で退職後に庭師をやっているのでした。その二人はなんと小学生の時のクラスメートで、一緒に担任教師に悪戯をした仲だったのです。
ヌード・モデルに常に恋してしまう画家「キャンバス」は、ついに妻から離婚を迫られていますが、一向にその悪癖は直らない。しかも画家の世界でも孤高。さみしい画家です。
妻を唯一大切な人生の伴侶として生きてきた庭師「ジャルダン」とは、対照的に描きだされていますが、この二人の友情は、互いの生き方の相違を知り、今までの人生を語りあいながら、二人は共にその家全体にいのちを吹き込もうとしたのです。なつかしい思い出を家のあちこちに見つけながら、画家はみずからの魂のルーツにまで辿りつくのでした。二人の日々は微笑みに満ちていました。
しかし、フランスの田舎町の穏やかな陽ざしと、緑豊かな自然のなかでの時間は、あっけなく終わってしまいます。「キャンバス」が急いだ医師の手配も間に合わず、庭師「ジャルダン」は末期癌で亡くなりました。庭師が最期まで画家に頼んだことは「もっと明るい絵を。もっと身近なものを。」ということでした。
最期のシーンは「キャンバス」の展覧会。そこに並んだ絵画は、すべて「ジャルダン」が手にしたものばかりでした。草刈鎌、ナイフ、ロープ、愛用の赤いスクーターなどなど、そして庭師の着衣の妻、庭に咲いた花、実った野菜や果実でした。画家はまた新しいスタートラインに立ったのではないでしょうか。
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