Oct 08, 2005
太宰治 人間失格
秋である。柿の実を見るときまって、この小説を思い出す。もう著作権が切れているようですから、長文引用しましょう。
『また、或る秋の夜、自分が寝ながら本を読んでいると、アネサが鳥のように素早く部屋へはいって来て、いきなり自分の掛蒲団の上に倒れて泣き、「葉ちゃんが、あたしを助けてくれるのだわね。そうだわね。こんな家、一緒に出てしまったほうがいいのだわ。助けてね。助けて」などと、はげしい事を口走っては、また泣くのでした。けれども、自分には、女から、こんな態度を見せつけられるのは、これが最初ではありませんでしたので、アネサの過激な言葉にも、さして驚かず、かえってその陳腐、無内容に興が覚めた心地で、そっと蒲団から脱け出し、机の上の柿をむいて、その一きれをアネサに手渡してやりました。すると、アネサは、しゃくり上げながらその柿を食べ、
「何か面白い本が無い? 貸してよ」
と言いました。
自分は漱石の「吾輩は猫である」という本を、本棚から選んであげました。
「ごちそうさま」
アネサは、恥ずかしそうに笑って部屋から出て行きましたが、このアネサに限らず、いったい女は、どんな気持で生きているのかを考える事は、自分にとって、蚯蚓(みみず)の思いをさぐるよりも、ややこしく、わずらわしく、薄気味の悪いものに感ぜられていました。ただ、自分は、女があんなに急に泣き出したりした場合、何か甘いものを手渡してやると、それを食べて機嫌を直すという事だけは、幼い時から、自分の経験に依って知っていました。』
柿の実を見ながらいつもわたしは苦笑する。「なんと女性は甘くみられたものか。」まぁ。どうでもいいですけれど。。。
柿一つ足の先まであまくなる 昭子
おまけの甘味。たしか一個五百円以上とかいうケーキを買ってきてくれるはずだった娘のお土産である。どこでこれに切り替わったのか、女の子の気持はわたしにもわかりませぬ。。。画像をクリックして、拡大してみてください。
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