朝早く起きて野菜炒めを作る
玉ねぎを四分の一線切りにしていたら
重なっていた一枚一枚がはがれ散らばり
小さい方から三番目ぐらいの一片が
ころがりはずみで落ちてどこかへ
消えた 流しの下
そんなはずはないのに
見つからない はいつくばって捜しても
とるにたらぬこと
とるにたららら・・・
びっくりした
ここはどこだ
少し寒い
うすぼんやり
誰の目からも遠く離れて
案外な場所
見つけてほしくない
鬼はあきらめて家へ帰れ
人の指の脂っぽい匂い
包丁の引き裂く光
細菌がのさばる空気
人の場所はくさい
ここはいいなあ
ずっと
見つかりたくない
声を殺し
斜め上空30度あたりを見ていたい
そうして
遠いいつか近いいつか
からからに干からびて
やさいでも玉ねぎでもなくなって
名前のつけようのない
なんでもないものに
なるんだ
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