しばらく 海でジャブジャブしたあと 砂の上に倒れて本を開く 大地から垂直に視線を伸ばすと まず文字の黒 紙の白 パラソルの赤 パラソルの緑 パラソルの黄 そしてひろがる夏の空の青 はるかかなたに一点の黒 今日で休暇が終わる 外していた秒針を取りつけ ベランダの無彩色の靴下を取りこみ 寝ついた子を起こさねばならぬ ねばならぬ ねばならぬ ぼくらの領域外を ゆうゆう旋回する 一点の黒 トンビ。