昆虫ベッド

昆虫ベッド

清水鱗造

周りの粒は
腐乱しやすい
とくに傷物は足が早く
冷蔵庫の奥に置いても
すぐにぬらぬらが始まる
そんなときにも
くちなわレンズで見ると
悪食な人間が
机のランプの下で
本を開いて読んでいる
彼がそのうちベッドに横になり
眠りはじめると
胴周が二メートルほどある
黄色いセキセイインコが
並んで眠り
黄色い羽の頭を向けるので
彼の夢は丸見えになる
その中で彼は
細かい肉切れを食べていた
削いでいくケバブ料理の様式に従い
似た町を次々に通る
その一つに
蛇の目が多量に散っている
側溝を見た
それにしても
虫々する日
ガガンボ用万華鏡を覗き
腐蝕の滝から
遡りたい

一枚一枚
剝がれる化石の中で
半透明のまま飛ぶ
トンボの眼球表面に
昆虫の脚がごちゃごちゃ密集して
浮かびつつある
かすかな文字の塊