微細ニュース
清水鱗造
バラの枝にこびりついた貝殻虫を
ワイヤブラシでこすっていたら
トゲが刺さり
人さし指に
待ち針の頭ほどの血の玉
*
雑誌に書かれた作り方どおりに
鍋からぽかぽかした粗熱を取ると
タンポポの丸い綿毛ほどの大きさの
熱のかたまりが
台所に浮きあがる
*
散歩中に
雑誌から切り抜かれたヒトを見た
ペラペラとして頼りないが
周りが少しけばだっているのは
速く動きすぎたのかもしれない
しかし
雑誌の切り抜きには
そんな摩擦で黒く焦げているところもあるものだ
*
耳の形のつむじ風
気分がまだらな町
裏通りの空に
歪んだ缶のような月が浮かぶ
地面に落ちている
剝けた皮膚のひとひらに
惨憺たる町を描いた
入れ墨が残っていた
月光にぽつんと照らされた
舗道上の黄色いマッチ箱