昔日のおもいで
三井喬子
「昔日のおもいで」というお菓子が届き
なんだなんだと神棚にあげ
とかく初めてってのはうきうきするから
踏み台から落っこちそうに急いで
落ち着け 落ち着け 見っともない
ただの餡子玉みたいだけれど
お餅かな
求肥かな
いそいそとほうばる
てな訳には行かない
お湯を沸かして
待って冷まして
お茶の新しい葉を急須に入れて
何という事もない昼下がり
お母さん
お茶を淹れたわよ
と 神棚に供え
あ お母さんは仏壇に居るんだったわね と
つまらない一言をかけて
見ん事 こちらの口に入る
御馳走様ね お母さん
「昔日のおもいで」は甘すぎて
必然的に 冷凍庫の中で硬くなり
一年経ってもそのままで
三年経ってもまだ残っていて
捨てるに捨てられない硬いおもいで
百年もたせてミイラにしょ