冬至

冬至

南川優子

母よ あなたに
起こされたくはなかった
わたしは自分で
起きたかった

毎夕 日没と同時に
あなたはわたしを飲みこみ 夜が明けるまで
わたしを出さなかった
冬が深まるにつれ
あなたのなかで過ごす時間が
日に日に長くなった

あなたはわたしを 暗闇から守っているのだと
思っていた
けれど あなたこそ 
わたしにとっての暗闇だった
あなたが子守唄を 歌っている間
わたしは 電車が遠くで走る音に
耳を澄ましていた
あなたがわたしに 薄桃色の靴下を
編んでいる間
わたしは 草にまみれた羊のにおいを
嗅いでいた
あなたがお腹を なでている間
わたしは いつの日か恋人が わたしの頬をなでるのを
感じていた

日が昇ると
あなたはまたもや わたしを産んだ
光にさらされ まぶしいわたしを
あなたが心配そうに 見つめているとき
わたしはなるべく
光を身に着け 目を開いてゆき

冬至の日 あなたとわたしの力は
等しくなった

あなたが目覚める前
わたしは 自分で選んだ曲で
目を覚まし
あなたの外の光を わたしの目で感じ
平泳ぎで あなたの暗闇をかき分けて
あなたから起きた