転がり絵本
清水鱗造
王子という字に点を加えれば玉子
キャベツの頭に仕込んだ茹で玉子が出てきて
王子の顔をしている
だけど玉子は食べ物なので
おでんの汁に入れて煮る
真っ青な水がたたえられている
畑の向こうの用水池
いろんな形の野菜が花を付けて歩きだし
自分の背丈より長い杖を持って
行列する魔術師たち
と思って近づいたら
釣り竿を持った子どもたちだ
白い紙で筆算していたら
左上に黒いものが動いていく
手押し車を押して歩く二ミリメートルのおばあさん
紙の上を歩いている
黒い粒
虫眼鏡で観察すると
小さな甲虫
真珠が転がった音がしたと足元を見たら
ダンゴムシが丸くなって転がった
ころころころころ
(2018.12.15)