絵 ──少年少女詩集から
倉田良成
スケッチブックを開いて
まんなかに三角をかく
その三角形の中にせいかくによっつ
三角形をかく
みんなおんなじかたちの三角でなきゃいけない
とがったほうを上にしたみっつの三角のそれぞれに
黄
赤
青
の色をクレヨンでぬりつぶしていく
大きな三角のまんなかの
とがったほうを下にした三角を
クレヨンのぜんぶでぬりつぶしたら
まっくろな、真のあんこくになる
けれど
クレヨンじゃなく
黄色
赤色
青色
のひかりをそこにあつめれば
まぶしい、真の白色になるのさ
大きな三角のまわりをみっつの角が触れるようにとりかこむ輪をつくり
それをさらにうちがわにとりこむもっと大きな三角をつくる
さっきまでの大きな三角のうちがわの三角のおのおのにも輪をつくり
そのまたうちがわに三角をつくる
こうしてそとへもうちへも色から色をかさねて
かぎりもなく殖えつづけ
割れつづけていくのだけれど
そのちゅうしんにはむげんのやみと
むげんのひかりとがある
むかしの、物をすこしでも知った人は
これを、まんだら
と言ったのさ
こうしてせいみょうきわまりない極彩色のきゅうでんをかいたあと
絵は
だいちの風とともに去る