りんごの木
南川優子
これは 何かの罰なのか
それとも ごほうびなのか
あなたは今夜
りんごの木の下に
わたしを寝かしつけた
いつもの部屋であなたが
鴨の羽毛のふとんに包まれ
寝息を立てている間
わたしは白いパジャマ姿で
湿った土の上に 横たわっている
りんごの実は
赤が黄色を侵し始め
枝にかかる くもの巣には
虫けらたちが 死んだ音符のように
捕らわれている
月が雲に隠れるたびに
りんごが赤みを増し
わたしの体めがけて 落ちてくる
わたしはじっと
その重みを受け入れる
わたしの体のなかで
重力と果汁とがとけあうとき
あなたは 夢をみながら
待っている
わたしの体が
すっぱい赤いあざで
あふれかえり
りんごの落下に耐えられるほど
したたかになって
あなたの寝床に戻り
あなたの愛を受け入れるのを