夜の灯の下で

夜の灯の下で

高田昭子

行間や二行空きは
溝を跨ぐようなもので
絵でも音でもないものが
今 そこから書きはじめられようとしている

数枚の原稿用紙は
愉快犯のように
ライターほどの火にあぶられている

そして たばこの煙のように
誰かの鼻腔や咽喉を苦しめてゆく
空に吸いこまれるわけでもなく
拡散して やがて見えなくなる

この街の暗渠の蓋を
うっかり踏みぬいてしまったように
それは落ちて流れてゆく
あるいは捩れた紙のなかで圧死する