夜の灯の下で 高田昭子 行間や二行空きは 溝を跨ぐようなもので 絵でも音でもないものが 今 そこから書きはじめられようとしている 数枚の原稿用紙は 愉快犯のように ライターほどの火にあぶられている そして たばこの煙のように 誰かの鼻腔や咽喉を苦しめてゆく 空に吸いこまれるわけでもなく 拡散して やがて見えなくなる この街の暗渠の蓋を うっかり踏みぬいてしまったように それは落ちて流れてゆく あるいは捩れた紙のなかで圧死する