レンズ 清水鱗造 球面に ガラスを磨いていると 映った空が見える 遠景はできたり消えたりする雲だ 革でふきつつ研磨を続けると ガラスを通して手の茶色いシミも見える 窓際の瓶に無造作に生けられた花々 角度によっては火花のように花弁が映る コーヒー茶碗を持って 表面を調べていると 小さな粉が数粒ある それは ルリ色のもの 羽を広げたまま 数頭の蝶が 映ったまま レンズの光に 含まれている