浄夜と大工 清水鱗造 水底のほうの澱が すっかりなくなって 透明になっている さまざまな生物が跳梁し 飛び 人間が似せて作ろうともしているのに 劇的な化学変化が有機物によって 起こったのだろうか ぼくたちの記録の縁に 海藻のようにまた多量の記録が付着し そのままに 境界で飽和の一線を超える そのとき古典を携えた 生活者が昆虫の触角のような大工道具をもって 現れる たぶん その人は花と呼ばれるものと関係がある