エミルタージュ美術館展
鑑賞のあと

十八世紀初頭の、建都三百年となるロシアのロマノフ王朝が誇る華麗なる宮廷文化遺産を見たくて、福山から広島県立美術館まででかけた。
ウィークデイにもかかわらず、館内はごった返していて、前に進もうにも容易には進めない。館内は、一部は歴史をたどり、二部は財宝、三部は絵画、となっていた。そのスケールは膨大なものである。
中でも私が惹かれたのは、二部の財宝で、エカテリーナ二世が集めたサンクトぺテルブルクの装飾工芸品のコレクションだった。位階章、金杯、ネックレス、指輪、ブレスレットなど、本物の宝石が惜しみなくちりばめられている。特に煙草入れなどはダイヤ、ルビー、エメラルドなどをふんだんに使ってある。食器類も彫金などが施してあり、それは見事だ。こんな時代からウェジウッドはあったのかと妙な感心をしていた。
エカテリーナ二世が乗った黄金の馬車は、宝石、刺繍、金の彫刻細工が目をひき、ため息が出るほどきらびやかである。ベルサイユをしのぐほどのロシア芸術の黄金時代を築いたようだ。
三部の絵画に至っては、私は詩を書いているので、詩にまつわる三点の絵画に目が止まった。「ペルセウスとアンドロメダ」と「ディアナとアクタイオン」の絵はいずれも、ローマの詩人、オウィディウスの「メタモルフォーゼ(変身物語)」から題材がとってあり、その物語性に惹かれてしまう。
そして、「キューピット 詩の寓話」の絵は、三十分以上もこの絵の前に佇んでいた。ロココ様式を代表する優美で軽快なパステル調の絵は、見るものをも優しい世界に引き入れる。
「エミルタージュ」とはフランス語で「隠れが」という意味。ヨーロッパ各国から買い集めた三百万点の絵画・彫刻・線画・装飾工芸を、エカテリーナ二世は密かに楽しんだ という。都は栄え、それらの財宝が、今 ときを越えて よみがえる。
気がつけば、三時間半も館内に留まり、グッズまで購入し、帰途についた。久々に、とびっきりいいものをみせてもらい 心に満腹感を覚えた。


(エミルタージュ美術展は、05年、1月30日まで、広島市中区の広島県立美術館であります。)


(2005・1・17、中国新聞 夕刊掲載)


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