2015/9 [HOME]

++ 日記 ++

2015/9/29(TUE)
9月もあと一日。
長くルーティーンであったテニスを一時中断、休む。
もう体育会系のスポーツはやらなくていい。楽しみとしてだけでいい。バドミントンもあるし。
081
おれは今日一日、何を見たのか
何を見て、何を感じたのか
起きて、妻と話した、何を?
食べて、新聞を読んだ、何を?
バドミントンをして、笑った、どうして?
昼寝をして、出かけた、どこへ?
クエスチョンマークばかりの一日
答えはいらない一日
081
昼寝をした
起きたとき暗かった
朝のレッスンのじかんだ!
あわてて階段を下りた
なにか空気がちがった
まだ夕方だった


得体のしれない空気
半分この世ではない空気
異次元などというものを知らなくてもそう言いたい空気
そんな・・・


知ってるはずの通りを歩いて行くと
知らない店やおっさんを見かけて
なぜ知らず知らない通りだと気づいて
急に空気が藍色に滲んで
あるけどもあるけども知らない通りで
飽きてきたころ知ってるおばさんに声をかけられ
知らない通りから知っている通りに変わる刹那の
あの・・・


あの・・・
わけのわからないところにまよいこんだあの・・・
なんとも言えないあの・・・
人はみな後ろむきで影もなく
こわいわけでもなく
楽しんでいるふうもなく
ただ
不思議
不思議そのもの


あの空気
きらいじゃないな


2015/9/27(SUN)
055(?)
5月の
いい天気の10時半には
読みかけの文庫本を指にはさみ
レースカーテン越しに差し込む光で
殺人犯を追いかける


5月の光は右のページを斜めに照らし
左のページに目が移ると
影から文字が浮き立つように
右手の指に持ち替える
真上の蛍光灯など不要


窓の外は一面光の眩しさ
この部屋は光とその影が
貝やお面や掛け時計などの実在を見せている


5月の朝10時半
犯人は白日の眩しさを嫌い
幾重にも重なったページの闇に潜んでいるのか
それとも
輪郭の似たおれの影の内に棲みついているのか

2015/9/25(FRI)
080
ふいにこぼれる
なんでここにいるんだろう
クアラルンプールでスチームボートの串をくわえながら
ハノイでバイクのブレーキを踏み信号が変わるのを待っているとき
まるでスコールのように突然
なんでここにいるんだろう
こぼれながらチクチクみぞおちあたりを刺す


それは質問じゃなく確認
異質のものにあぶられた中で支えた
一つの呪文

2015/9/24(THU)
079
なにかがいる

目が
気にかかっていることを思いだしたり
色の奔流につかれたりすると
文字の上をただ滑るだけ
なにか目に通じる道をふさぐ
なにかがいる

耳が
高い音が絶え間なく飛び続けたり
眠りの淵をひっかかれたりすると
いつもは開けっ放しの窓を閉める
なにかがいる

年を追うごとに
少しづつ傾き分解していくのを
一時的にしろ防いでくれる
なにかがいる

2015/9/23(WED)
078
今まで自分の歯ブラシの色を知らなかった
毎日にぎっているのに
今さっき、違う場所に置いてきがついた
「ああ、緑なんだ」と

いつだったか 運転していて
車のプレートの地の色を妻に聞かれて
当然のように「白だろ」
降りてから見ると、黄色だった

「見る」 
この短い言葉の懐は案外深い

心を傾けて焦点を合わせるのも「見る」
ぼんやりまぶたを開けたままやり過ごすのも「見る」
一瞬でも「見る」
眺めるのも
のぞくのも
チェックするのも「見る」

いとこのような位置に「見える」がある
「見る」だけでは目の機能をカバーできなかったのか
「見える」が生まれなければならなかった理由とは

「見る」って、なんだ?
疑問ばかり増殖する

2015/9/22(TUE)
ここは日記帳だから たまに
日記でも書いてみようか。
日記ってどういうんだっけ。
朝はね、火曜日だから7時からレッスンがあって、東京住まいのベルギー人と会話と、「聞いて繰り返す」練習
8時から、英語のオンラインレッスン。
30分。意味は通じるブロークンイングリッシュ、だろう。
それから朝ごはん。何を食べたか。パンじゃないから、
ごはんだろう。たぶん、筋子といかの塩辛と酒盗をちょっとづつ
ごはんにのっけた。おかずは?
もういいや。
12時に遊びに来ている二人のの姪を酒田駅に送りに行く。
それからすぐに妻と娘と3人で「エビワンタン」を食べに。
満足して、むすめと妻をデパート前で降ろし、うちへ。
3時から、ロンドン住まいのアメリカ人にレッスン。
N1の語彙の練習。むずかしい。
4時に妻の実家に妻と娘をおくりに行く。
4時半から、きのうのえさが残っているので、という理由付けで、海へ。
ただし、ハゼとクロダイの子供のみ。
夕日がきれいな夕方。
・・・・・日記って疲れる。

2015/9/19(SAT)
077
チ、チ、チ、チと鳴いている
そのうちにテーブルの上を行ったり来たり
指を出したら乗ってきた
小さい
1センチあるかないか
そのわりに長い触覚
手のひらから腕のうぶげをかき分けあっちこち
かねたたき
ひょいと見えなくなった隙に
台所から梨のかけらを持ってきて、テーブルに置く
パソコンの影を伝いながら近づいて
梨に到達 噛みついた のかどうか、動かない
そのまま10分、20分、パソコンから目を転じるとまだ
梨のジュースを吸っている
きっと至福のとき 夢を覚まさないよう
おやすみ
そっと部屋を出る

2015/9/16(WED)
076
チ、チ、チとなく虫の、名前を知りたくて、
図書館に行き調べ、ネットに当たった
ネットで鳴き声も聞くことができて
「カネタタキ」があの虫の名前だと知った

小さいコーロギの仲間だった。


ネットで
「カネタタキがわざわざ部屋の中に入ってくる理由がよくわかりません。」どうしてか教えてくださいと質問している人がいた。
それにこたえる人もいて、
「やっぱり灯りについ釣られてということなんでしょうかねぇ…。そちらではカネタタキが多いのでしょうか?こちらでは今ツヅレサセとミツカドコオロギらしき鳴き音がしますがカネタタキの鳴き音はしません。残念!」そして「・・・・・様の虫への優しい心を感じて、つい答えにもならない答えを書いてしまいました。すみませんでした。」と書いている。
カネタタキが架けたふれあい。
二人の投稿者の柔らかい心に温かさをもらった
この掛け合いを初めの質問者がこう締めくくる。
「実は昨日質問した後、たまたま見つけたので手でそっと包んで網戸を開けてベランダ側に出したんです。
網戸の外にほれっ!と出したつもりが、腕にしがみついていて戻ってきてしまい、もう一回ほいっ!と出したんですが、肘の方に回りこんで窓際のカーテンに飛び移り、網戸の開け閉め繰り返すこと5回にしてやっとベランダに出てくれました。
人の部屋が好きなやつだなあ、と思ってましたが、もしかしたら人が好きだったりして…。」
私もカネタタキと投稿者のお二人が好きになりました。
とってつけたようですが
松林の向こうの海に沈む夕日で
西の空が真っ赤です
そして
今、部屋の中でカネタタキが鳴いています
ほんとです


2015/9/13(SUN)
074ーA
この部屋のどこかに虫がいる
この部屋に入ったときから鳴いている
チ、チ、チ、チ・・・
鳴いて、どうしたいんだ、キミは
うるさくて眠れないほどじゃないけど
気になる 気になってひっかかっている
キミがおれのことばがわかるなら
おれがキミのことばができるなら
すこし相手になってもいいけど
姿も見せないキミをどうやれっていうんだ
ほらまた、チ、チ、チ、チ・・・
どこか人恋し気なのは
単に秋だからか



074-B
この部屋の片隅で虫が鳴いている
その声をここに再現できない
不自由な日本語 不自由な人のことば
「あ」という字の読み方はなに?
おれの「あ」の音とのあなたの「あ」はちょっと違うよね
でもどちらも(たぶん)「あ」と認定されるのは
なぜ?


074-C
6時半に目覚める
目を閉じてじっとしている
濡れた歩道を過ぎる車の音 カラスのアホー
昨夜の虫の声が聞こえない
まだ起きて着替えるには早い
虫の声が聞こえない
キミは夜しか鳴かないのか
それとも消えてしまったのか
おれはあの声を聞きたがっている
聞きたがっている


074-D
あの、チ、チ、チ、チとなくのはどんな虫か
スイッチョかキリギリスか
コーロギでもスズムシでもないな
体の色は茶色かみどりか
透きとおった声に透きとおったみどりが似つかわしい
おれの褥を訪ねてくるのだ
女っぽいほうがうれしい
素性が定かでないのもいい
平安のその昔にもチ、チ、チ、チ


075
人間には50万種の色を識別する力があるという
また、黒と白のふたつしかない言語もあるという
そしてどんな言語にも黒と白はあるという
黒と白、それだけで足りる生活
影と光の影絵でつづられた日々


3つしか色彩語を持たない言語の場合
3つ目は必ず赤だという
赤、血の色、けものを倒すときほとばしる色
赤、あかつきの夜明けの色



2015/9/10(THU)
073
終日の雨。
テレビでは一日中関東の大雨のすさまじさを伝えている。
おかげで、テニスも中止
なにか持て余すほどの時間じゃないが
刻一刻にぴったり寄り添うことができず
ちぐはぐなまま過ぎていく2時間
微妙に合わないという母の入れ歯のような2時間

072‐2
線を縦にまっすぐ引こうとすると
いつも微妙に左右にふくらむ


あそこまでまっすぐ歩いたら
足あとは左右に少しにずれているのだろうか


車を車庫に入れると、わずかに左に傾いていることがある
気をつけているつもりなのに


あー、あー
おれの声、届いてますか
伝えたいこと、そのまままっすぐ、届いてほしいよ


なのに風
空気の水っぽさ
相手の視線にひそむ感情
おれも雑念が絡んだりして
おれの声、ときどき蛇行してるのかも

2015/9/9(WED)
072
線を縦にまっすぐ引こうとすると
いつも微妙に左右にふくらむ


あそこまでまっすぐ歩いたら
足あとは微妙にずれているのだろうか


車を車庫に入れると、わずかに左に傾いていることがある
気をつけているつもりなのに


あー、あー
私の声は届いてますか
伝えたいこと、まっすぐ届いてほしいのに


風、湿度
相手の視線
声にひそむ雑念で
おれの声
あるいは蛇行してるのかも

2015/9/8(TUE)
071
「まゆ」という漢字が書けなくて
小さいポイントをいくら目を凝らしても
「クサカンムリ」の下の
囲まれた内側は見えない
あてずっぽうで、まゆは虫で、糸を吐くのだと思い
書いたら果たして、当たっていた
ただし、糸を吐く虫、ということか
左右逆だった
思うに
そんなまゆもあるだろう
「おれ、ちょっと違うんだ」と言ってる
へそ曲がりが


2015/9/6(SUN)
070
出来事が今日はなかった
会いたい人に出会うことも
蹴った石ころで猫の目がつぶれることも
二階から駆け下り損ねて足をくじくことも
大量にもらったナスで作ったからめすっぱめ料理がうけることも
何かに気付くことも
何かに傷つくことも
何かに気づかわれることも
空は晴れ、時々曇り、ところによって雨
秋、ただの秋


2015/9/4(FRI)
069
ここは本来、日記帳なのだ。
おれの18時間ほどが、時に細かく、また、荒々しく記録されるはずのものだ。
だけど、どうして日記なんてつけるんだろう。
自分の日々の反省が、明日の自分にアドバンテージを与えてくれるというのか。
今日生まれた素朴な疑問。
反省はサルでもできるなんていうCMがあった。
あれ以来、それまで威厳のあった「反省」は、からかわれる対象となった。
こんなふうにさびしく消えていく言葉もある。


2015/9/1(TUE)
068
書くこともないのに白紙に向かうとはどういうことだ
そうして一行が始まった
夜明けはいつか来ると信じた者が勝ちだ
詩的夜明けか?
クエスチョンマークはいいな
楽して人生を渡っているようだ
いやなことはやめて
時間に好きなことをたっぷり漬けよう
時たま伸びをして、30メートルぐらい上から俯瞰して
いいにおいがする方角を確認せよ
好きなことが発酵したにおいだ



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日記帳(3) v1.02.00 エース (素材協力:牛飼いとアイコンの部屋)