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++ 日記 ++

2014/9/28(SUN)
10年前に出した詩集の一編をほめられた
うれしかったが、さほど心は躍らなかった
10年前は太古の昔だ
おれの中を***ザウルスが闊歩していた
ギャオーと火を吐きながら

おれの恐竜はどうしているだろう
いまおれの中にビルマホシガメが住んでいて
手のひらの上でレタスをパリパリ食んでいる
大きさの問題じゃないって言ってもね

10年前をほめられてうれしかった
でもそれよりかきのう走り書きしたのを読んで
いまのおれとハイタッチしてくれたら
もっとずっとうれしかった
実感を100%味わえるのはいつも今

ギャオーと鳴かない陸ガメが
手のひらの上でそう言った



浜辺に行った
貝がらをひろった
貝がらはからっぽ
だけどとおい生き物のにおい

浜辺に行った
クルミをひろった
クルミはかたくでこぼこで
はるかとおい星の味

浜辺に行った
プラスチックの残骸
さわりもしなかった
人間のくさい息の形



浜辺には
半分砂に埋もれたみどりのビンがなければならなかった
ラベルも何もないビンでなければならなかった
その中には紙が入ってなければならなかった
紙には地図が書いてなければならなかった
その地図はどこかわからない地図でなければならなかった
見つけたヤツは地図を信じなければならなかった
また、自分を信じなければならなかった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、
夢は夢のまま終わらなければならなかった。


浜辺に行った
貝がらをひろった
貝がらは空っぽ
だけどとおい生き物のにおい


浜辺に行った
クルミをひろった
クルミはかたくでこぼこで
はるかとおい星の味


浜辺に行った
プラスチックの残骸
さわらなかった
人類の欲望のなれの果て

10年前に出した詩集の一編をほめられた
うれしかったがさほど心は躍らなかった
10年前は太古の時代だ
おれの中を***ザウルスが闊歩していた
ギャオーと火を吐きながら


おれの恐竜はどうしているだろう
今、おれの中にビルマホシガメがいて
手のひらの上でレタスをパリパリ食んでいる
大きさの問題じゃないって言ってもね


10年前をほめられてうれしかった
でもそれよりかきのう走り書きした一編を読んで
今のおれとハイタッチしてくれたら
もっとずっとうれしかった
実感を100%味わえるのはいつも今


ギャオーと鳴かないリクガメが真顔でそう言う

浜辺には
半分砂に埋もれた緑のビンがなければならなかった
そのビンはラベルのないビンでなければならなかった
ビンの中には紙が入ってなければならなかった
その紙には古い地図が書いてなければならなかった
それはどこかわからない地図でなければならなかった
彼はその地図を信じなければならなかった
また彼は自分を信じなければならなかった
だから彼は迷うことなく旅に出なければならなかった
そしていろいろな経験をしなければならなかった
そして
若き日の夢は夢で終わらなければならなかった



2014/9/11(THU)
もう秋だ。
きのうは天井にかまきりがへばりついていた。
かまきりを見ると炉辺の火で腹を焼いて食べていたTさんを思い出す。
「残酷」ということばを実感した。
子どもの頃、かまきりの腹からハリガネムシが出てきてそれが蠢くさまは奇怪だった。
何でそんなことを書くのだろう、おれは。
何で今日に限って思い出したのだろう、そんなことを。
もう秋だ、からハリガネムシまで、途切れない線があるのだ。
おれの腹の中で、まるでハリガネムシのように
もの言わず、ただ蠢いているもの。



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