180
眠りに入る前にちょっと
今日のおれでいる間にちょっと
もう12時を過ぎているがまだ明日でなく
きょうに留まらせたまま
今日はなだらかな一日だった
少し本を読み少し母に付き合い
少しメールや葉書に返信し
少しおいしい魚を食べた
少しだと一日を怒らせない
少しずつだと黙って見逃してくれる
どんな痛みもなく
傷ついた思い出に横たわることもない
頬杖をついて
ヒトも車も通らない真夜中の道路を見ている
今
腕はおれを支えているのを喜んでいるようだ
181
この小さな手帳を手にすると
どこからともなく小人が現れて
文字のブロックを運んでくるんだ
文字のブロックは「あ」から始まるわけもなく
メダカの水槽のエアポンプのように
立ちのぼりまた立ちのぼる
そんなふうであればいい
そんなふうはじつは夢想
今、娘がご飯だよと知らせに来た
食べるほうと家庭の***が先になる
181
この小さな手帳を手にすると
どこからともなく小人が現れて
文字のブロックを運んでくるんだ
文字のブロックは「あ」から始まるわけもなく
思いがけないことばを組み合わせ
新鮮な空気をもたらす
そんなふうであればいいのだが
おれのポンプはフィルターが汚れてるって
今、娘がご飯だよと知らせに来た
ポンプは食べるほうに簡単に切り替わる
180‐2
眠りに入る前にちょっと
今日のおれでいる間にちょっと
もう12時を過ぎているがまだ明日でなく
きょうに留まらせたまま
今日はなだらかな一日だった
少し本を読み少し母に付き合い
少しメールや葉書に返信し
少しおいしい魚を食べた
少しだと一日を怒らせない
少しずつだと黙って見逃してくれる
どんな痛みもなく
傷ついた思い出に横たわらなくてもいい
頬杖をついて
人も車も通らない真夜中の道路を見ている
今
腕は首から上を支えているのをうれしがってる