2016/1 [HOME]

++ 日記 ++

2016/1/31(SUN)
036-2
お彼岸の中日、墓参りに行った。
風もないのに蝋燭が消えた。
ガレージの雨樋が外れていた。
梯子を登り、雨樋を二本つなぎ、ビニールテープを巻いた。
足元は木の棒一本に支えられていた。
古い友達が書いた論文「非漢字圏に対する日本語学習法」をネットで読んだ。
知ってるような、知らないような言葉がいくつかあった。


…ピンとこない。
…ここにいて、ここにいない。
キャップをひねってボトルのお茶を飲んだ。
飲んでから何日か前のお茶だと気づいた。
いや、飲む前から気づいていたようだ。


どこにいる
何をしている
なにより
おまえはだれだ

099‐2
できれば
人前であくびをするような
「おれ」と言いたくないのだけど
「わたし」では血が流れていない標本みたいだし
「ぼく」には、その後に「おしっこ」と言いかねない甘さがある
できれば
品の感じられない「おれ」とは
自分を呼びたくないのだけれど
今のニホンゴにはそれぐらいしかないから
(英語の「I」はどうなんだ。中には画一的な「I」を使いたくないひともいるんじゃないか。
(中国語の「我」にしてみたって、漢語のこの言葉に抵抗を覚えるひとも、あるいは。


朝、顔を洗うついでに見る鏡の中の自分に
「わたし、ぼく、おれ」をあてはめてみる
窓から流れ込む新鮮な土のにおいに
「おれ」を選び
一日が始まる

  <私道で>

2メートルの距離で
目が合った
あの猫
すれ違った50年前と
同じ目
柳の木は伸びた
猫は
僕の目の中に
50年前と変わらぬものを
みたか

2016/1/26(TUE)
101
考えていないことを書く
しゃっくりのように吹き出たものを写す
ことばが吹き出さないとき
(目が重い。こぼれそうだ。

2016/1/19(TUE)
101
今日は風が強い
ときおりサッシの窓がカタカタいう
横殴りにふる雪そしてあられ

こんなふうにことば、吹き付けろ
襟口から脇の下、そして心臓を起こせ
今日は今日のことばがない
起きていたつもりだが
口をついて出たのはきのう食べ残した言葉
おもしろい
おもしろがれ せめて

2016/1/18(MON)
098
もう行かねばならない
おれの中の時計になりきれないやつが
そでをひっぱるんだ
ことばを閉じて
ファスナーをあげて
シベリア季節風で肺を満たして
あぶり出しのようなそこへ
そこがどこにあるかわからないが
そこに何があるかわからないが
わからないから行く
わからないのはたのしい
禅を組む心もちで
くつのひもを強くむすび
筋子のおにぎりを2個背嚢に
おーいお茶を一本入れ
今までの鏡を割って
唄を埋めて
ドアを開ける
行かなければならないんだ
カギはすてていく

100?

たとえば

 すべての野心を捨てようと考えつくとはなんて奇妙なこと  だ!
 突如として目からウロコが落ちて僕は見る
 馬のたてがみに落ちたばかりの
 真っ白な雪片を!

この詩を理解するのに何か月かかったか
いちど目を通して
書棚で数か月
なにかの折に(気にかかっていたらしい)
取り出して巻末の「解説」を読み
窓を開けて空気を吸い
降りかかる雪を舌で溶かして やっと
今日、おれの中で詩になった
それにしても理解したというのは言いすぎだ
感じた、こういうしかことばはない
理解は意味におもむく
感じた、これがピッタリだ
このままそばにいればいい
  (作中の詩はロバート・ブライ「馬に水をやる」)

2016/1/13(WED)
098
もう行かねばならない
おれの中の時計になりきれないやつが
そでをひっぱる
ことばを閉じて
シベリアからの風に
ファスナーをあげて
そこに何があるかわからないが
そこがどこにあるかわからないが
わからないから行く
禅を組む思いで
くつのひもを強くむすび
筋子のおにぎりを2個背嚢に
おーいお茶を一本入れ
今までの鏡を割って
唄を埋めて
ドアを開ける
行かなければならない
カギは持って行かない

099
できれば
おれと言いたくないのだけど
わたしでは硬いし
ぼくには、その後に「おしっこ」と言いかねない甘さがある
できれば
品の感じられないおれとは
自分を呼びたくないのだけれど
今のニホンゴにはそれぐらいしかないから
(英語のIはどうなんだ。中にはIを使いたくないひともいるのではないか。
(中国語の我にしてみたって、漢語のこの言葉に反感を抱く人も、あるいは。
朝、顔を洗うついでに見る鏡の中の自分に
わたし、ぼく、おれをあてはめてみて、
やはり、おれか、と確かめ
一日が始まる

2016/1/12(TUE)
もう行かねばならない。
ことばを閉じてシベリアからの風に
ファスナーをあげて
そこに何があるかわからないが
わからないから行く
禅を組むように
くつのひもを強くむすび
筋子のおにぎりを2個背嚢に
おーいお茶を一本入れ
鏡を割って
唄を忘れて
ドアを開ける
行かなければならない
カギは持って行かない

2016/1/6(WED)
シテの会例会。8号の合評2回目。
自分で一人で読むときには見えなかった作品の凸凹が、合評の席で見直すと、新しく、確かに見えてくるものがある。何だろうこれは。客観の力が主観、思い込みをほぐすのか。

097
書く。
書いたものは詩だと思って書く。
追い立てられるように書く材料はないが、それでも書く。
それだからか、書く。
そんなことをさせる自分の内側の海なんて知っちゃいない。
もちろん、そこが海なのか草原なのか
スラム街なのか火星の氷のなかなのか
知りゃしないけど
書いているうちがことばがおれを連れて行ってくれる
それはボルネオの熱帯雨林に入るのと同じだ
何と出くわすか
虹色の蛇か
ハモニカのような百足か
歌を奏でる木の実か
ストリッパーのように絡むツタか
おれの内側が悲鳴を上げるか
喝采を叫ぶか
書いてみないとわからない
これこそが楽しみ

2016/1/5(TUE)
もう5日過ぎたのか。
気分はまだおもち食ってる。
このところ、村上春樹のエッセー漬け。
文章が柔らかくて、わかりやすくて、説得力がある上にユーモラスでもある。こんな文が書きたい。とても書けない。
「詩の散歩道」2回目分送る。

2016/1/3(SUN)
新年です。
お客さんも今日帰って、やっとのんびり。
でも、食べ過ぎて、お腹がきつい。
明日からは普通の生活に戻る。



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