2012/1/29(SUN) 帰国して、１週間すぎた。 仕事場に顔を出して、学校回りはしているが、 何か、精神的な充足感がない。 実際、精神的な充足感などあるのだろうか、どうすれば感じられるのだろうか。 ベトナムでできなかった好きなことをやれば、充たされるのだろうか。 テニス、読書、おいしいもの、仲間との語らい・・・ どうも、そうじゃなさそうだ。 なにか、「果たす」ということ？ こうありたいという自分に近づくこと？ 「果たす」ためには「目標」を持たねばならないね。 （やだなあ、めんどうくさいなあ） 生がき、すし、フォアグラ、カリントウ、広東麺 映画「ミッション・インポッシブル」、「ダンス・ダンス・ダンス」の上、「立花隆のすべて」をただいま半分ほど。 思索も試作も施策も詩作も、なし。

2012/1/15(SUN) あけましてから、はや２週間。 ベトナムのこちらはもうすぐ旧正月。 街頭はなにやら正月風情。バナナの葉っぱらしき緑が積み重ねられて、あれは何に使うのだろう。 おれは20日に一時帰国、2月12日にホーチミンに帰る。 教員募集で養成講座を回る予定。 　＊ 「犬がアイスクリームを食べるんですか？」と僕は思わず訊きかえした。 「ええ、もちろん」と彼女は言った。「だってアイスクリームよ」 「そうですね」と僕は言った。 　（村上春樹「土の中の彼女の小さな犬」より） ここに詩を感じる。 ふわっとただよいつかみきれないなにか・・・ 　＊ 好きな詩人の好きな作品が 終りの一行によって 全体が不明になる テーブルの上を右往左往するアリよりおれは脳タリンだ アリはさっきこぼしたコーヒーというよりどころがある おれは突然訪れたひとつの不明を浴びて 行くところ どこにもない 　＊

2012/1/2(MON) 謹賀新年、２０１２。 ＜ホーチミンにいる＞ なにもないのだ　きっと 書くべきことなんて　ただ ペンを持つと　ペンは紙の上をすべり 文字らしきものが連なり その連なりはささやかな意味を持つ 意図しないそれは おれの知らないおれの欠片 すれ違っただれかの息づかい 　　＊ ＊のかわりに番号をつけたい 単なる順番としてのしるし だが、優劣にもとれる可能性を恐れる 　　＊ このところの余裕のない日々 帰ると晩ごはん　少し休むつもりが 朝になっている シャワーを浴びながら思う 「あのころは仕事だけの毎日だった。 　そんな一時期があってもいい」 という父のことば 　　＊ 明け方、大きな伸びをする 伸びて伸びて伸びて銀河の果て 拡散と凝縮をくり返し どこかの生命体がおれを受信する 　　＊ おれたちが死ぬまで生きることに 意味があるか 結果としての意味ならこじつけることもできるが 目的としての意味は　はたして 　　＊ おやすみなさいと自分に言って 目をつぶると 今日はそれで終わりだから 今日にさよならとも言って 目を閉じる ・・・ん、と 目を開けると 明日だから（たぶん） おはようと自分に言って こんにちは　って 明日に いう　かな 　　＊ 何かもやもやしたものが浮かんで ベッドから起き上がり 紙かノートをさがしにいった もやもやをことばにしようと もやもやを壁のようなものにはりつけて 正体をみさだめようと そのもやもやはことばでないと見えないのか もやもやをもやもやのままカンバスにぶつけたり もやもやを旋律に変換するすべのない・・・ おれはせいぜいことばの鍛冶屋見習い ３日前から住み込んで 親方が打ちすえる熱いことばからはじける 青い火花を ボーっと突っ立って　ながめている ＊ 詩は何かを言わなければいけないのか つぶやき、ひとり言、叫びではいけないのか 冷蔵庫にザボンがひとつある たぶん果肉が薄紅のやつ 冷たい空気の粒が身をまもる ゆっくり熟していけばいいのだ どんなものにもいつかピークは来る ピークがくるということはピークではないとき時が長くあるということでもある おれはどこにいるのだ ・・・逃れようのないアジア 　　＊ 僕は自分からも他人でありたい そんな一節が浮かんでは消えるせつな シッポを引き寄せ文字にした でも、どんな意味？ 何が言いたい？ イヤ、意味はこの次 だって、かっこいいだろ？ 　　＊ それほどでもない なにごとも それほど大きいわけでも それほどえらいわけでも それほど恐れる必要があるわけでもない 漠然とした不安が空にかかる バランスをとるように 気分も少し灰色にしておく 人と人がぶつかり 雷が落ちてもうろたえないように 一人になってもあいさつする人がいるように ここにはないけど 朝顔の花みたいに はじめと終りをはっきり区切りたいものだ その藍色が人の目に深く刻まれるのを知らないまま それほどでもない なにごとも 用心して 恐れるな

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