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骸骨人厭々日録


2004年5月

2004/5/9(sun)
アスファルト      足立和夫

コンクリートの部屋の
ドアノブを回すようにひねり
押しあけてそとに出る
湿った薄暗い廊下
頭をゆっくりまわし
天井のようすを見た
いく本か蛍光灯が切れている
一本は切れそうな音と光が
小さな炸裂を繰り返している
孤独な悲鳴だ
そのうち静かになる
いつものこと
気にすることではない
そのまま放って
曇天の外気のなかに溶けて
アスファルトの湿った黒色に
眼を落とす
泡立つ黄色の意欲が
だんだんと収まり褪せる
残りをコンクリートが
削る
それでわかった
ぼくは
ひとのたましいを
背負うことができないことが
地面に横たわっている
コンクリートの重量で
湿った空気にくるまれて
うずくまって
囁く
昏い沈黙に降りて
姿を消す人よ
あなたがたこそ
ぼくなのだ



初出『ぺらぺら』8号(2001年2月3日発行)



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