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骸骨人厭々日録


2004年2月

2004/2/26(thu)
失業     足立和夫


今日もおとなしく寝て
今日もおとなしいままに起きる
くりかえされる鈍色の日々
ふとんが住処となって
何ヶ月たつだろう
まぶしい太陽の世界
目玉が痛む
夜の闇の降臨は
ぼくのこんがらかったからだを
ほどいてくれる
会社からどのくらい遠くなったか
あんがい近いかも
もうお近づきになりたくはない
獰猛な睡魔の力に吊るされるのが
とりあえず正しい
こころも惰眠の底で落ち着いている
ぞんぶんに休息するがいい
将来の展望ってなにかな
わからなくても別に困らないか
アスパラガス茄子たまねぎサツマ芋
野菜を電子レンジでチン
無口な夜の底まで
静かに落ちていく
なにもかも許されるように
真夜中に沈む静謐な街にしみていく
からっぽの世界の暗さには
冷えびえした異物の光があった
いまは何もしゃべらなくていい
ただ見てればいい
人通りの絶えた夜道の先にみえる
ラーメン屋の神に
会いにいこう



初出『Lyric Jungle』5号 2003年1月20日発行



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