Dec 19, 2006

12月の合評会。

昨日の日曜日は、今年最後のPSP合評会の日。

この日私が一番だと思ったのは、小網恵子さんの「池」でした。
夜中、心と身体の境目に現われた池を見詰め、
そこにあるものが自分に与える影響を予感しながらも、不安定な足元を確かめつつ近づいていき、
自ら折り重ねた記憶をそっとめくって見ることをためらっているような作品でした。
小網さんが表そうとしているものは、下手をすると気付かずそのまま流れ去ってしまうような、
そんな非常に繊細な感覚です。
しかしそれでもその感覚が読むものの胸の内に流し込んでいけるのは、
小網さんの持つ非凡な技術の成せるわざなのでしょう。
改めて書く技術の大切さを思い知らされると同時に、
自分の内側を恐れずに見詰めることの大切さを思いました。

また福士環さんの作品も心に残りました。
個人的な経験からもたらされた、個人的な思想、考え方の変化について書かれたものでしたが、
このような作品にありがちな排他的であったり押し付けがましかったりという感じが全くなく、
別の環境やものの考え方をしている人にも、素直にその変化が受け止められる柔らかな作品でした。
福士さんは恐らくは特定の人に向けてではなく、
幅広い人へ向けて言葉を発していかれたいのだと思います。
言葉でこねくりまわしたり誤魔化したりせず、素直な目で自分の内側を見詰めることは、
逆に外側に向って伝える力になっていくことを改めて感じさせられました。

今年一年合評会に参加して、なかなか得るものは多かったと思います。
自分では気付かなかった欠点を知れたりもしましたし、詩の読み方というものも随分わかってきて、
すると今まで随分薄っぺらな読み方しかしていなかったことがもったいないです。
また、様々な人にも出会えましたし、飲み会では他では知れない詩壇の事情や、
いろいろな詩人のエピソードなども知ることができました。
合評会というものは否定的な見方もされがちですが、いい意味で自分勝手に利用すれば、
なかなか有益な場所だと思います。
また来年も懲りずに参加する予定…。
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