Nov 02, 2006

11月!!

ということで、現代詩手帖11月号を購入しました。
特集は谷川俊太郎の詩論。
詩の森文庫での詩論三部作完結に合わせた特集で、谷川氏と四元康祐さんによる対談、
それに著名な詩人さんなどがエッセイを寄せています。

そして今号では「現代詩新人賞」が発表になっています。
受賞作品は中尾太一さんの「ファルコン、君と二人で写った写真を僕は今日もってきた」。
中尾さんのお名前も作品も初めて目にしました。
掲載された受賞作を読むと横書きを多用した大作であり、
私には詩人の過去を叙情的に物語っていく作品と読めました。
詩的な長篇小説から最も詩的な部分だけを抽出してまとめた作品のようでもありますが、
表現したいことの焦点がはっきりとしている所為か、そのエッセンスは地下水のように澄んでおり、
この方はこの先、既成の詩の概念から一歩はずれた、唯一無比のやり方で自己の世界を広げていく
予感がします。
選評によると、個人で造本されたものが送られてきたとのこと。
あるいはその形で読むと、誌上で読むのとは、また違った魅力があるのかもしれません。

今月号をパラパラとめくっていて一番心惹かれたのは、「<クレオール>な詩人たち」で取り上げられて
いるカリブ海の島セントルシア出身の詩人デレック・ウォルコット。
ノーベル賞を取っているすごい人ですが、その作風は、奴隷制度の過去や貧困といった重いテーマを
取り上げながらも、ユーモアと明るさを持ったものです。
細かい名詞や事情などは注釈に頼らざるを得ませんが、わからないままでもぐいぐいと読まされます。
氏の特集は前号に引き続いてのものであり、今号に掲載された長編詩は、詩というより寧ろ
物語性の強いものですが、行間の向こうを覗いてみると、太陽とそれを反射する海の煌きが見通せ、
それにヘミングウェイとかマルケスとか、南米の作家たちの文章が持っているあの匂いが薫ってきて、
単純ですが、ああ南米っぽい、カリブ海っぽいなあと思います。
こういう、自分が生まれ育ったところとは何もかも違う雰囲気というのは、
どうしても惹き付けられてしまいます。
表されるニュアンスのひとつひとつが興味深く、特に彼らが肌で感じてきたことから滲み出てくる言葉の
様子、ものごとの受け止め方など、恐らくは実際の十分の一も理解できていないであろうけれども、
なんか、かっぱえびせんのように、やめられずに次から次へと読んでしまいます。
是非まとめて読んでみたいところですが、残念ながらウォルコットの詩集は絶版の様子…。
古本屋を回ってみるしかないようです。
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