Mar 27, 2006
先日、古本屋で購入した
八木忠栄著「詩人漂流ノート」(書肆山田)を読了。これは現代詩手帖の編集長を勤められていた八木忠栄さんが、
新人編集者時代から思潮社を退社されるまでに出会った様々な詩人たちとの交流を、
愛情のこもった文章で書き綴り、「静岡新聞」に連載されたものです。
一章にひとりずつ、総勢54名の有名詩人たちのエピソードが語られていくのですが、
読み始めてみると異常に面白く、読み終えてしまうのが勿体無くて、
だからゆっくり読もうと思っていたのですが、一章読み終わって、
次の章の詩人の名前を見て、数行目を走らせると、
もうその章の最後まで読まずにいられないほどでした。
とにかく全編、詩と詩人に対する愛に溢れていて、読んでいて幸福な気分になります。
私は詩作品を味わうために、詩人個人のことを知る必要なないと考える者ですが、
どのエピソードに登場する詩人も、愛すべきキャラクターの持ち主で、
いやがおうにも、もっとこの詩人のことが知りたい、
この人の詩集を読んでみたいという気分にさせられます。
田村隆一さんのエピソードなど流石に最高ですし、
吉増剛造さんや清水哲男さん、天沢退二郎さんなどの大詩人が登場してきた時代を、
ほぼ同世代の詩を愛する青年の目、また新米編集者の目で見た様子はとても新鮮、
それに大岡信さんや吉岡実さんなどの先輩詩人に愛されながら仕事をする著者の様子も、
興味深いものがありました。
他にも詩人と編集者という間柄でなくては発生しないやりとり、
またそんなときに見える詩人の横顔など、
ああこんな風に長い付き合いというのは築かれていくのだなあと思わされます。
また詩集という書物が、いかに大切に丁寧に作られてきたかも垣間見られます。
妥協のない詩集に仕上げるために、発案から出版まで何年もかかってしまったり、
子供のようにアイデアを出し合う様子にも、やはり著者の詩に対する愛情を感じます。
更にひとつの章の最後には必ずその章で取り上げた詩人の詩が一篇、
全文が載せられており、一種のアンソロジーとしても読むことが出来ます。
奥付を見ると発行は20年前の1986年です。
最近といえばまあ最近なので、
詩に詳しい人ならとっくに読了済みという方も多いかとは思いましたが、
面白かったので紹介してみました。
文中何度も繰り返してしまったように、とにかく詩と詩人への愛情に触れられる一冊なので、
まだ読んだことのない方、入手することは少々困難かと思われますが、
どこかで見つけたら是非。
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