Oct 28, 2005

800ヒット目という

祈念すべき数を、自分で踏んでしまいました。

白井さん、トラックバックありがとうございます。
ホームページ、拝見させていただいてます。
すごい賞を取られたんですね。
おめでとうございます。
とてもお忙しいようで、お体だけには充分気をつけてください。

車谷長吉さんの句集を本屋で見かけました。
去年あたり訴えられて話題になった奴ですか。
ハードカバーで2500円。
ちょっと高いなあなんて思いつつ保留。
車谷氏の小説やエセーは大抵すぐに買うのですが、句集となるとちょっと…。
一応中身はぱらぱらと見てみたのですが、
ぐっと惹かれるようなものはないような気がしました。
私の感性がまだ追いつかないということもありますが。

車谷氏は詩人高橋順子さんの旦那様ですね。
この作家の作品は随分と読みました。
印象深いのは、少々古いものになりますが、
「漂流物」(新潮社)という短編集に収録されていた「抜髪」です。
この作品は全編、車谷氏の御母堂の喋りのみでが構成されています。

車谷氏は東京のいい大学を出て就職しておきながら、三十歳でドロップアウトし、
関西で下足番などしながら三十代の殆どをすごしてから、小説家になった人です。
その車谷氏の行動の一々に対して、御母堂は訛り言葉で悪態をつきまくります。
そして息子の、心の中に隠していること、また自身では気付くことの出来なかった本心までを見抜いて、息子に突きつけるのです。
憎んでいるようでも愛しているようでもある罵詈雑言のみで、この作品は成立しています。

恐ろしい、えぐるような言葉の連続です。
この御母堂に言わせれば、勉強することも、人に親切をすることも、貧乏になることも、
人に褒めてもらうことも、恨まれることも、みんな罪悪ということになります。
発言を読み進んでいくと、普段は気にもしなかった自分の行動の裏側を、
キリで穿り出され、顔の前に突きつけられ、無理やり匂いを嗅がされているような気分になります。

小説家の書くものですから、全てが本当に発せられた言葉ではないでしょうが、
しかしカギカッコで括られた発言のどれもが生々しく、本当を暴いているかのようです。
それをわざわざ原稿用紙80枚ほども延々と書き連ねるとは、この作家も救われません。
目に浮かぶのは、たくさんの刃物を暗い六帖間の畳にずらりと並べて、
それを一本一本自分の裸の胸に、淡々と刺していく作家の姿です。

車谷長吉という作家は直木賞も取っていますし、今ももちろん評価の高い作家ですが、
本当に評価を得るのは、亡くなられたあとではないでしょうか。
縁起でもない話ですが、そんな気がします。
Posted at 01:45 in n/a | WriteBacks (1) | Edit
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