Feb 22, 2006

前日に引き続き、

19日の日曜日は、月イチ恒例のPSP合評会。

今回はゲストが多数参加で、熱気に溢れた会となりました。
まずは白井明大さんのお友達で、遠く京都から遊びに来たついでに参加してくださった、
高橋正英さん、森悠紀さん、大谷良太さんのお三人方。
なんと全員京都大学!しかもなかなかの男前揃いです。
合コンなんかではさぞかしぶいぶい言わせてるんだろうなあ、なんて邪推。
しかしみんな真面目な方のようでした。
そして久谷雉さんが中心となる同人誌「母衣」の同人で、
前回の現代詩手帖賞受賞者の永澤康太さん。
私は去年クロコダイルで行われた朗読会でお姿を一方的に拝見はしていましたが、
お会いするのは今回が初めてです。
もうひとり、作品は出されませんでしたが、会の途中から詩人のあなたひとみさんが、
参加されました。
それに加え、前回は二次会から参加してくれた小橋みきさんが合評会から参加、
残念ながら福士環さんが欠席されましたが、
他のレギュラーメンバーは勢ぞろいし、
いつもは7,8人である合評会がなんと総勢17名参加となりました。

高橋さん、森さん、大谷さん、永澤さんは、
慣れない場所であろうにもかかわらず、活発に意見を述べてくださり、
合評は熱のこもったものになりました。
いつもは私も、少ないながらも意見を述べさせてもらうのですが、
今回は人数が多い上、一回限りのゲストの方が参加ということで、
聞き役にまわりおとなしくしていました。
ということで、ゲストの方々の作品を中心に感想など。

森悠紀さんの作品は、氷のぶつかりあう音のような言葉が、
風の中を舞う光景の中を歩いていくような印象を持つ、うつくしいものでした。
難解である、冗長であるとの意見が多かったのですが、
ひとつの意味に集約していくことを目的とはしていない作品であるようで、
言葉は、響きによる印象、字面による印象によって、
ある世界を構築する可能性を持っていることを示唆していました。
ただそれを成功させるのには、ただならぬ技量と感性が必要であるようです。
森さんには、難解である、冗長であるという意見を誰にも言わせないぐらいに
この世界を完成させて欲しいです。

高橋正英さんの作品に私は、田中一村の絵を思いました。
人のこない海辺の木々、蟲たちや花々が、一日一年一生を絡み合って、
ひそかな音と共に生まれ消えていく、そんな光景が感じられ、
実際に肌をその世界に浸しているような気持ちのよい作品です。
言葉の運び、行がえから生まれるリズム、ひらがなの用い方からは涼しい風を感じられ、
私は今回の合評会で最も好きな作品でした。
高橋さんの作品は、現代詩フォーラムで読めますので、是非ご覧になってください。

永澤康太さんからは、別々の内容の詩の断片が描かれた小さな色紙が各自に配られました。
全員に違った詩がいきわたっているので、
ひとつの詩としての評は成り立ちませんでしたが、
創作というものの根本的な発生を問うものとして重要でした。
全て手書きで書かれており、脳髄からペン先に流れる瞬間的な思考がそのままに、
字の大きさ、太さ、色に反映されて現出しています。
しかし恐らく永澤さんにとってこのスタイルは通過点に過ぎず、
壮大な作品の完成へまだ踏み出したばかりであり、その初期段階に触れた感じです。
あるいはひとりの詩人が出来上がる過程を見ているのかも。
そこに目を凝らしてみると、詩を書くものとして得るものがありそうです。

もうひとりの大谷良太さんは、作品は出されなかったのですが、
つい最近詩学社から詩集「薄明行」を上梓されています。
2月21日付けの城戸朱理さんのブログにも写真入りで紹介されており、
恐らく今年あちこちで話題になるであろう詩集です。

今回初めて出された小橋みきさんの作品は、
これは私見なのですが、生きている瞬間瞬間に嫌悪を感じて、
生きた瞬間にぱっと捨て去り、すぐ次の瞬間に移行してまた捨て去り、
そうして成り立っていく日常の速度を、言葉の流れで表現した作品だと感じられました。
作品中、他人が読んでいる漫画雑誌や携帯の待ちうけ画面などに、
自分の顔を見つけて驚き逃げていく、という場面があるのですが、
自分と関係のないものを、いちいち自分と繋げてしまって焦燥するという感覚は、
わかるような気がしました。
よくある垂れ流しではないかという意見もありましたが、
私には、音楽で言えば楽譜の枠の中に必要な音が必要なぶんだけ並んでいる、
といった整然に見え、これも好きな作品でした。

レギュラーメンバーの中で特に良かったのは、手塚敦史さんの作品でした。
一行一行読み進めていくごとに、こちらの頭の中にイメージが作られていって、
最終行にそれが完成するような、まるで絵描きの作業を肩越しに眺めているような作品です。
これは私が勝手に見えたもので、作者が意図したものと全然違うかもしれませんが、
春から夏にかけての爽やかな季候の頃に、無人の教室の窓が開いていて、
カーテンが風に揺れている、といった絵が私には浮かんで見えました。

合評会が終わると、いつものように二次会。
ゲストの方々のおかげで平均年齢がぐっと若返り、更に久谷雉さんも加わって、
大盛り上がりとなりました。
特に大谷さんは弾けられて、みんなに幸福を振りまいていました。
森悠紀さんと永澤康太さんは、詩手帖の投稿欄に私と同時期に投稿していたこともあり、
私の名前を知っていてくれたのですが、小川三郎という古風な名前のためか、
「60歳ぐらいの人だと思っていた」といわれてしまいショック…。
そういう人って多いのでしょうか。
やっぱり顔写真出しとくんだったかな。
一応、三十代半ばということで、そんなに若くはないですが、そこんとこよろしく。
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