Jul 20, 2007
道の途中でみちのく鉄砲店
昨日、役所によって、自立支援医療の継続手続きをして、当日行くのがめんどいのと出かけるかもしれないので、期日前投票までしてきた。空いているのでいいです。どこに入れたかは内緒です。ふらっと図書館に入りました。現代詩手帖が置いてあったので、ぱらぱら見ていました。藤沢周さんと城戸朱里さんってお友達だったんですね。知らなかった。
ほんで、色々見てまわって、詩集のコーナーに来たので、こないだ中也賞をとった須藤洋平『みちのく鉄砲店』を手に取った。本を手に取るって、バクチ的要素がありますね。とんでもないのをつかまされたと思うときと、当たり~って思うときと。当然、お金を出すときの方がさらに、直感とリサーチの勝負なんですが。
図書館で借りずにその場で読んだんですが、非常に読みやすかったですね。読み安すぎてまずいとも思うんですが、僕は、この方の苦労がわかっていないのかもしれません。しかし、時々ほろっとしそうになって、こんなとこで、泣いたら、あかんと思う場面もありました。人としての情に訴えかける系統の文章かな。彼が障害者だからって、特別扱いするつもりは、ありませんが、それなりの刻苦を感じて生きている感じが伝わってきました。若いなあーと思うときが多々ありますが、時々けっこうしたたかな文章って感じがしました。でも、ちょっとテキストから浮かび上がってくる人物像がいい奴過ぎる、さわやか過ぎるっていう印象も持ちました。そういうのが僕は気になってしまうんですね。実際根がいい奴なんだろうなとは思いますけども。
主人公が、お母さんを殺したいと思ってると、ハーブティーをお母さんが運んできて、こんなの飲んだことないわ、ちょっとしょっぱいねという詩がありますが、ちょっとむずがゆい感じもします。皆さんの中には、私も含めて、思春期とかに「親を殺したい」って不覚にも思った方もいらっしゃると思うんですけど。それプラス障害があるので、親に対する悲喜こもごもがあると思います。でも、その感情をこうして、処理してしまうのは、もったいない感じがします。あざとさはないんですが、なんか、ちょっといい感じで話にしたって感じがして。実際本人がそう思ったとしたら、仕方ないですけども。まあ、好みの問題かもしれませんが。
そういうホームドラマ的な展開がうまく行っているなあと思う詩もあって、おじいちゃんに、ドラッグを買ったことがばれて、思いっきり殴られて、欠けた奥歯のあとが今でも痛むみたいな詩はあるんですが、この詩は、奥歯が痛いってのが、色んな感情の流れをせき止めてないかんじがして、いいなあと思いました。やはり時間というのは大事なんですね。
他にも、まあまあいい詩や、成功していない詩もあるんですが、本人に代わって、お兄さんがあとがきを書いていました。あとがきがお兄さんってのも驚きましたが、本人は「出尽くしてしばらく書けない」みたいなことを云ったと書いてました。
僕が思いますに、渾身の力で書いたのだろうし、体調がおもわしくないのかもしれないけど、もしかしたら、しばらくしたらまた書くんじゃないかなと。ここで終わりじゃなかろうと思います。これは愛をこめていうんですが、賞を取ったって、次、本を出すとかになったら、大変。その後も鳴かず飛ばずの人だって、詩に限らず大勢いるんだから、青土社から、出て、ちゃんと著者にゆかりのない図書館に置かれてるんだから、出だしはまあいいんじゃないかと思います。
これで、自分の地肩が全部出たわけじゃないので。世の中は、障害者であろうと、そうでなかろうと、書き手として出た限りは、厳しいのは同じなので、みんな親切に、「おう!こんな詩書いたのか」って親切にいってくれる人ばかりじゃないですから。と大した作品を書いていない僕が言っても何の説得力もありませんな。
あと、障害者だからっていう理由で持ち上げている方は、まさかいないとは思うんですが、そういうのは本人のためにならないと思います。いいと思ったらいい、ダメだしも、きっちりと。もし愛せないとしたら通り過ぎよ。それが、愛情だと思います。もちろん、固有の身体の固有の苦悩とか感覚って言うのは、あるので、それは大事です。でも、「ぼくのからだが芸術なんだ」みたいなことを書いていましたが、どうしてそうなのかっていうのは書いてほしかったです。ちょっと共感できず申し訳ない。それは突き詰めたらホントに大事な問題にぶつかりますから、もっと書いてみてほしいな。そこで止めないで。
帰りに、本屋によって、入門書は野暮ったい感じだったので『ジンメルコレクション』を買いました。面白い文章ですね。俺は文学者にはなれないってうエッセイもはいっていましたけど。不思議な書き手。あと、ジャン・リュック・ナンシーの本も買いました。ナンシー関ではありません。神山睦美さんの『夏目漱石は思想家である』も気になったんですが、高くて手が出ず、図書館で借りようかな。神山さんの本は『服従という思想』がとてもよかったから。
Edit this entry...
wikieditish message: Ready to edit this entry.
A quick preview will be rendered here when you click "Preview" button.