Dec 03, 2006
宮沢トシの恋
朝日新聞の昨日の折込に、土日になると入るのだが、be on Saturdayという小新聞みたいのがあって、その中の「愛の旅人」という連載が面白い。ここのところ、文学者についての「恋愛沙汰」について書かれているのだ。前回の深田久彌が「日本百名山」で売れる前、妻も小説家で、かなりの部分を、彼女に書かせていたということが載っていて、小林秀雄や川端康成は「パクリ」を見抜いていたそうなのだ。深田久彌は、その後離婚して、初恋の人と結婚している。これもびっくりしたが、今回のはかなりびっくりした。宮沢賢治の妹トシは、賢治が愛していたのは世によく知られているだろう。そのトシは花巻高等女学校時代に初恋をした。その学校の先生で、バイオリンを習っていたという。そこまではいいとして、実はその先生に、もう一人の学生も恋していて、その方とは両思いだったという。トシは、ラブレターを書いたまま、出すかどうか迷っていたが、そのラブレターが同級生にばれて、学校中のうわさに。それどころか、当時の新聞「岩手民報」に、二人の女学生と先生の関係として、載ってしまったのだという。
それで、大騒ぎになって、トシは、故郷にいられなくなって、東京の大学にいったというのだ。トシは、秀才だったという。しかも、東京に出てから、ある宗教にはまって、それが、排他的な宗教とはちょっとちがうみたいで、彼女の信仰が(記事には「排他的な法華経信仰」の賢治と書かれているが)賢治の心を動揺させていたみたいなのだ。トシは病に倒れて故郷で先生になるが程なく亡くなってしまった。
トシのスキャンダル(?)を知った、山根知子さんという研究者は、このことを発表していいか、墓前まで報告に行ったそうだ。
賢治とトシ、少し似たもの同士だなと感じたり、賢治の感じていた妹、賢治の宗教観についても少し再考を促される気がした。
矛盾を抱えた人間達の像がリアルに迫ってくるようだ。賢治の伝記的事実では浮かび上がってこない何かがあるような気がする。
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