Feb 26, 2006
雨、かぜのひきかた
雨だ。こういう日はスティングのアルバムSACRED LOVEを聞く。スピード感に満ちて、哀切な鎮魂で、チョイ悪なアルバムだ。スティングのいいところが出ている。美しい。雨は憂鬱なのだが、ジャジーなリズムが駆け抜けるとなんか素敵な日曜日。とはいえ、このアルバム、すごく久しぶりに聞いた。悲しみだけでは日々は進まないということを音楽は教えてくれる。カゼが本格化。こういうときは、辻征夫さんの詩「かぜのひきかた」を思い出す。
こころぼそい ひとはだから
まどをしめて あたたかく
していて
これはかぜを
ひいているひととおなじだから
ひとは かるく
かぜかい?
とたずねる(引用)
そうなのだ。ひとのなかにいて風邪は引っぱり出される。ひととひとの命の通路を描いたものとしてはピカイチだ。風邪の時は、誰かと一緒にいたくなる。そして一人寝床へ帰っていく。そういう営みがある。いまんところ、鼻と咳だけで、からだは大丈夫。昔インフルエンザにかかったときにもらった風邪薬を飲んでいる。「かぜのひきかた」の対極にあるように見えて、その実、共通してるのは尾崎方哉の「咳をしても一人」ではないかと思う。今、一人ぼっちですごしている。彼女は出かけている。方哉のひとりは並大抵ではなかったろうけど、思い出されてくる。辻征夫も方哉もどちらも、さみしいけど、どこか他者と深いところでつながっている。でも、描き出す方向は反対かもしれない。風邪は生命の連鎖を思い出させるもっとも身近なきっかけ。そして、自分のからだがあるということがわかるものとして。だから「咳をしても一人」
辻征夫さんの「昼の月」も好きな作品だ。
ずーっと一人で寝てて今日は悲しくないし、あんまり気にする事もない。昨日はあんなにいい天気だったのにね。春先は不思議だ。からだが慣れるまで時間がかかる。短い詩を書く。
「花」
とてもかなしいことはないけど
手をつないでいて
いつか放す日がくるとしたらかなしい
けど、いまはそんなこと考えないで
窓の外を眺めています
君はどこを眺めている
どこを歩いている
鼻水をためながら
ぼーっとしながら
君の事考える
どっちですか
みえませんよ
暗闇の中桜はまだ
あたたかい手のひらのことを考える
雨で濡れた鳥が鳴いて
辻征夫さんについて書いた批評はこちら。
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