Jan 07, 2009

PARIS

s-effel

監督&脚本:セドリック・クラピッシュ

《キャスト》
ピエール:ロマン・デュリス
エリーズ(ピエールの姉):ジュリエット・ビノシュ

 ムーラン・ルージュの元ダンサー「ピエール」は心臓病で余命わずか、助かる方法は心臓移植しかなく成功率は40%~50%。つまり命の希望は半分以下。彼は移植提供者を待つ日々を静かに過ごすことを選ぶ。
 弟を案じて同居を始めるのは、三人の子供を抱えたシングルマザーの「エリーズ」。彼女はソーシャル・ケースワーカーの仕事をしている。「エリーズ」を演じる「ジュリエット・ビノシュ」は化粧もしていないが、なんと魅力的な女優だろう。
 もう若くはない人生を楽しむことを諦めている姉に「人生を楽しむように。」と言うのは「ピエール」だったが、彼の行先の見えない日々の一番の楽しみはアパルトマンのベランダからパリの街を行き交う人々を眺めることだった。

 この姉と弟、三人の子供の暮らしと関係は、映画のなかでくっきりと浮き彫りにされていますが、それ以外の登場人物は、かすかな繋がりがあるだけで、散漫にさまざまな人間が登場して、さまざまな人間の断片が繋がれてゆくという仕掛けとなっている。つまり、これが「ピエール」の見た「RARIS(2008)」の姿だというわけですね。さらに不法移民が多い街。憧れの街。民族の坩堝。そして貧しさや民族差別のことなど、パリは特別の街ではなく、どこにでもある人間の生き死にが繰り返される街にすぎないということか?。

 人々は日々を懸命に生きている?「ピエール」のアパルトマンの向かいに住む、ボーイフレンドのいる美しいソルボンヌの女子大生。彼女に恋をして関係を持つ歴史学者。彼の弟の建築家。元夫婦のジャンとカロリーヌは、離婚後も同じマルシェで働いている。エリーズと恋に落ちるジャン。カロリーヌは同じマルシェで店を構えるジャンの仲間と恋をする。民族差別の代表のようなパン屋の女主人。日々を刹那的に楽しむファッション業界の女たち。食肉野菜市場で働く男たち。その男たちが集まる酒場で働く女たち。カメルーンからの不法移民。etc。。。

 「ピエール」に病院から「心臓移植提供者」の知らせが入る。彼は冷静に病院へ行こうとする。姉にアパートの玄関で別れを告げ、最期の場所となるかもしれない病院へと向かうタクシーの中から、「ピエール」はただじっとパリの街と人々を見ていた。そして、タクシーの窓から彼を照らしているものは、晴れたパリの空だった。映画はそこで終わる。

 耳慣れた音楽だなぁ、と思ったのですが、これは「サティ」の「グノシェンヌNo.1」でした。幾度か静かに流れた音楽でした。(渋谷 bunkamura ル・シネマ)にて。
Posted at 16:16 in movie | WriteBacks (0) | Edit
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