Jul 17, 2006

ローズ・イン・タイドランド

rose

 監督・テリー・ギリアム

 この映画を観る前にオフィシャル・サイトをのぞいてみましたが、わたくしの想像のなかでは不幸な少女が、心のなかに作り出してゆく「ファンタジー」の世界だろうと受け取っていました。この映画も多分監督のイメージとしては、「ファンタジー」であり「現代のアリス」なのかもしれない。
 しかし、わたくしの凡庸な感性では、主人公の少女「ジェライザー・ローズ」が現実で遭遇する「不幸」は度を越えているし、そこから辿ってゆく「ファンタジー」の世界も「ブラック・ファンタジー」としか表現のしようがないのだった。わたくしはひたすら「幸福な奇跡」を待ち望みつつ観ていましたが、全編を通して「救い」がない。隣席にいた見知らぬ女性は最後まで観ずに席を立ったまま戻らなかった。同行者も「あの女性、戻らなかったね。」とポツリと言った。気付いていたのだな、と思った。しかし、最後になってやっとかすかな希望を見たけれど、この「ローズ」の少女期の不幸な記憶は生涯に渡って影を落すことになるだろうと思われる。
 こんな時、わたくし自身がとりたてて「賢母」であったとはとても思えないが、無意識に、もう遠くなっているはずの「母」の意識が立ち戻ってきて、子供がこんなに不幸であってはならないと「怒り」すら感じるのであった。少しだけストーリーを記しておきます。

 ローズの父親は場末のバンドマン、母親とともに麻薬中毒である。その麻薬注射の手伝いを当たり前のように手馴れた様子で手伝うローズ。母親はそのために突然死する。その母親を置き去りにして、廃屋と化した父親の郷里の家に逃げる。そこでやがて父親も麻薬のために急死するが、ローズはその父親のそばでしばらくは暮している。ローズがいつも離さずに持っていたものは、首だけの人形であり、それを指先につけて「二人分の一人語り」を続けながら、ローズは「美しい大人」にも「勇気ある人間」にもなれるのだったが、不幸は限りなく続いてゆくのだった。 

  もう、どれくらい落ちたのかしら。   もうじき地球のまんなかあたり・・・・・・

  原作・「タイドランド」・ミッチ・カリン・角川書店
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