夢
南原充士
シンボリックな鬱屈にとらわれて飲めない酒をあおると
たちまち抗しようのない睡魔に襲われベッドに倒れ込んだ
落ち込んでいくベクトルのいくつもの成分が入れ替わり立ち代り
悪夢を生み出したとしても夢見る者にはどうしようもない
するとひとりの女の顔が鮮明に浮かび上がってきて
長い髪をかきあげて上目遣いにこちらを見るので
からだに触ろうとしたところで目が覚めた
その女は女優顔で男を惹きつけずにはおかない雰囲気を持ち
幼い娘を育てながら自分の才覚を伸ばしていたが
精神の不安定が他人と長く付き合うことを難しくしていた
彼女への思いは隠しておいたしなにひとつ秘密も作らなかったのに
なぜ夢に現れてきてこちらを誘おうとしたのだろうか
ほとんどの夢は忘れてしまうのにその夢はなかなか忘れられない
こちらの気持ちの中で彼女は復活しこちらを悩まし続ける
もちろん彼女にはなんの責任も関わりもなく別々の時間が過ぎていく
もしこちらが夢をひきちぎれば彼女の心は痛むだろうか
もし彼女に連絡をとろうと動きはじめればどんな未来が待っているだろうか
避けられない夢の記憶が理不尽にこちらを戸惑わせる