足立和夫

しずかな沈黙が昂っていた
草たちの
かすかな呻き声は
宇宙の空にひびき
吸いこまれて消えていく

いのちたちは
その炎を燃やしつづけて
どこかに居を定める こともなく
空間を何億年も放浪し ているのだ
なぜだろうか

滅びてしまってもかまわない
奇怪ないのちが
おわるのなら

星たちの
ひかりの道を断ち切っても
かまわないのだ

むかしから
宇宙の苛酷な冷たさは
わたしたちの
いのちの熱を
ひかりを
奪いつづけている

奇怪な謎につらぬかれたわたしたち
その不可思議の棘がなければ
生きられないわたしたち

いのちたちは
あきらかではない深さの
暗さの先を
凝視したままだ
そこに何かが在るかのように

神秘という暗黒か ら
ざわめきが聴こえるから
奇怪なわたしたちは
呻きながら
棘のように存在している