2009年、冬

2009年、冬

冨澤守治

ひとびと
成し遂げられなかった、人生の大事を
多くいまも孕む
陰を踏み、荒き嵐の坂道を歩き続ける
ひとびとよ

暗夜に彷徨うならば
月影が彼らの丸い背を照らしてはいるのだが
ひとびとは朝が来ても、それに気づかない
この暗黒に真近(マヂカ)い、灰色の時代

越えてきたのか、越えて行けるのか
この冬もまた寒い

聞こえるか、聞こえるか
流れ出している流行歌は
街頭演説のスピーカーから発せられたものだった
「いまだ足りない、いまだ足りない」
政治家たちは必死に叫ぶ
予算が足りないというよりも、希望が足りないのだ
ひとびとの希望、切実な生活の不足
つきまとう悲しみたち、喪失、うめき声

幾重にも本当のことは隠されている
この十年ほどのこと
何も経済などは回復していない
バブルの「戦後」は終わらず
産業を隠れ蓑にした
この悪しき、金融の慣習ばかりが
この惑星を席捲した

世界化、グロバリズム

犠牲者たちが壊れて行く、壊れて行くままに
罪もなく、生き晒される、あるいは自殺していく
おなじく、その子供たちも罪はあろうはずもなく
若者たち娘たちも罪はなく、そんなそんな

名もなき、ひとびと