テノスのちから 高田昭子 多くのおとこたちが 孤独なテノスを追いかける 辿りついた者は一人だけ 海のなかの受粉 テノスはだんだん 魚のようになる イルカのようになる 海はだんだん狭くなる ちいさな足が海を蹴って 大気の浜にあがる 獣の子のように 裸のままで叫び声をあげて 神々を集め 死神さえも呼びよせる 息をする 汗をかいている 足裏から脳髄まで連結する骨格を積み上げて いのちの重みに眩暈しながら二本足で立った、テノスよ。